祝　105棟目 　『2012 sangenya』

▲パッと見、要塞のような外観。ガレージのシャッターを開ければ、“ミュージアム”は道行く人にも開放される。

第二の人生を歩む2人にとって、

この家が最高の時間を

共有する場所になる

風景を愛で、趣味を楽しむ理想の住まいを
魚介類の卸業を営んでいたご主人が経営の第一線を退く決意を固めたと同時に、
真っ先に思い浮かんだのが
「60代の10年間は、人生で最高の10年間にしたい」ということでした。
その基盤となる理想の住まいは、『建てようネット』を通じて
中野次郎さんと知り合ったことで、実現へ一歩進みました。
　Mさんご夫婦が新居のために購入したのは徳島市内の分譲地。
周囲にも新居が立ち並ぶが、周囲の目を気にせず、プ
ライバシーが守られた家にするというのが大前提でした。
その上で、中野さんへのオーダーは主に3つ。
ひとつは、ぐるり囲まれた田園の風景を楽しめる家にすること。
ふたつ目は、ご主人が趣味として始めたクラシックカーを愛でられる場所を作ること。
そして最後に、一人でゆっくりくつろげるスペースを作ることでした。

想像の上を行く建築家ならではの仕事
ひとつ目のオーダーは、開放的に周囲を見渡せるウッドデッキを2階に作ることで実現しました。
これにはご夫婦ともに、「田植えの時期は湖のように穏やかな水景色が、
夏場は鮮やかな緑が、稲刈り直前は輝くほどに金色の稲穂がさざめく風景が楽しめるんです。
お願いしておいて言うのもなんですが、
これほど美しい景色が眺められるとは、思ってもみませんでした」とご満悦。
仕事一筋だった以前の生活では感じられなかった喜びを、得ることができたのです。
ふたつ目のオーダーには、贅沢にも1階をすべて車専用のスペースにすることで対応しました。
日常で使用する車は通常の車庫に、クラシックカーは専用のガレージに。
「愛車を存分に愛でていただけるように」という中野さんの粋な計らいで、
ガレージの脇にはテーブルと椅子が置ける小さなスペースが取られ、
ご主人専用のクラシックカー・ミュージアムに。
「一日中、愛車を眺めている時もある（笑）」というほど、ご主人のお気に入りの場所になりました。

〝大人のための住まい〟が2人のこれからを包む
そして最後のオーダーへの回答は、リビングをウッドデッキで隔てて作った、
いわば「居室内離れ」。文字通り“離れ”てはいるものの、
大きな窓のおかげで夫婦それぞれが息づかいを感じることができる程よい距離感、
そして空気感を演出しています。余生を共に楽しみ、
なおかつお互いへの尊重を大切にする。ある意味、
人生の酸いも甘いも経験してきた大人のための住まいは、
これからの2人の生活を心地よく包んでくれることでしょう。

① GARDEN TERRACE
② GARAGE-1
③ GARAGE-2
④ TUBO-NIWA
⑤ COART
⑥ BED ROOM
⑦ UTILITY
⑧ SENMEN DATUI
⑨ BATH
⑩ KITCHIN
⑪ DINING
⑫ LIVING
⑬ DECK
⑭ HANARE

■ 家族構成
施主、妻（50歳代のご夫婦）
■ 構造
鉄骨造
■ 敷地面積
212.69m2 （約64.45坪）
■ 延床面積
合計 218.41m2 （約66.17坪）
1階 123.90m2 （約37.54坪）
2階 94.51m2 （約28.63坪）
■ スケジュール
設計期間 2011年3月～2011年8月
工事期間 2011年10月～2012年4月
■ 設計監理
ナカノジロウ建築デザイン事務所
■ 施工
坂本工務店

▲ウッドデッキを挟んで左側がリビング、右側がご主人の“離れ”。その間の5～6歩ほどが心地良い距離感。


▲玄関は駐車スペースに挟まれるように。外出からの帰宅時の動線もスムーズになるよう配慮されている。


▲愛車2台を目の前にするミュージアムは
「1日いても飽きない」というほど、ご主人にとってとっておきの場所。


▲写真手前が55年式のMGA、奥が65年式のジャガーEタイプ。
壁面に鏡を取り付けたのは、「自分が乗っている姿を見たいから」というご主人のオーダーによるもの。

▲撮影日はあいにくの雨だったが「このウッドデッキのおかげで、
気温、風、雨など自然を感じられるのが気持ち良い」とご主人。


▲まさに借景。ウッドデッキから絶景を愛でられるようになったのも、中野さんの設計の賜物。


▲机に向かったときに目の前に風景を楽しめるようにと、窓の位置も計算されている“離れ”。


▲キッチンからダイニング、リビングへと続くスペースは、
移動のスムーズさや見た目の美しさを鑑みて一直線に。

▲「お互いを尊重する」という考えの延長線上にある、2つの洗面台。


▲水回りのスペースも一直線に配する家事動線への気配り。
「マンション生活時代とは比較にならない便利さ」と奥様も大喜び。

▲プライバシーを守るために、隣家と接する面の窓は小さめに。
開放的な面を集中的に田園に向けたのは、建築家ならではの設計力だ。

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【誌面未掲載フォトギャラリー】

Mさんの夢を叶えた建築家  ［建築家］ 中野次郎

設計コンセプト
「立地は住宅分譲地の西の端。北の道路のお向かいは家、
東と南には隣家。つまり3方はプライバシーを保護するべき方角。
一方、西は思いっきり遠景の眺望を楽しむことが出来る方角。
塀やフェンスではなく、建物のプランや形自体で、このテーマを解くことを目指しました。
朝日を浴びた田を望み、遠くの山に陽が沈む、そんな家になりました」。

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