建築家と素敵な家づくり
「ここは自分が生まれ育った場所だから、風景や環境のことを誰よりも分かっているつもりでした。でも中野さんには、そのイメージを大幅に上回る暮らし方を形にしていただいた。本当に感謝しかありません」
リノベーションによって新しく生まれ変わった住まいを愛おしそうに見つめながら、ご主人はそう話す。もともとは奥さまと2人で県外のマンションに住んでいたが「実家の近くで暮らしたかった」というご主人の要望もあり、実家の敷地内の倉庫を改修するプランが浮上。しかし、そこにはクリアすべき多くの課題があった。
「父が建てたものを壊したくなかったので、新築という選択肢はありませんでした。でも、鉄骨で建てられた倉庫は敷地も狭く、ここで暮らせるイメージが全く湧かなくて。工務店に描いてもらった図面も、満足のいくものではありませんでした」
そんな時、書店でたまたま『建てようネット』の書籍が目に留まる。「駄目もとで相談してみよう」と足を運び、マッチングの仕組みを通じて出会ったのが建築家の中野さんだった。
「最初に設計図を見たとき、あまりにも素晴らしすぎて『本当にこんな家ができるのか?』ってずっと信じられない気持ちでした」とご夫婦は当時の感動を振り返る。
一方、中野さんは初めて現地を視察した際、建築家としての使命に打ち震えていた。納屋として使われていた北側の壁の向こうに、里山の豊かな風景が広がっていたからである。
「早くこの壁が抜きたいと思った」と中野さん。もう一つ、彼が大事にしたのが母屋との関係性だった。
「ご実家との関係性も素晴らしく、奥さまも『生活の中心は向こうでいい』とおっしゃられていた。でも、だからこそ二人だけのプライベートな空間として成立させ、より柔軟で豊かな暮らしを実現させえるべきだと思ったんです」
倉庫の北側を少しだけ増築し、1階部分にはLDKと水回りを配置。北側に大きな開口部を設けることで、里山の豊かな風景を大胆に取り込んだ。さらに切り妻屋根の空間を生かし、2階にも広々とした空間を創出。今はテレビやソファ、ベッドなどが置かれ、夫婦二人でゆっくりとした時間を過ごすスペースとなっている。
「住むほどに、中野さんが建築に込めた意図を感じられるんです。窓の位置も絶妙で、開放感があるのにカーテンを締めなくて良かったり。日々、妻と二人で感動に浸っています」とご主人。実家との絶妙な距離感を実現した新居で、2つの世帯の幸せな日々が続いていく。
Zさんの夢を叶えた建築家 中野次郎
1974年生まれ、血液型O型、蟹座。信州大学工学部卒。北島コーポレーションで企画設計を担当の後、独立。一級建築士、インテリアコーディネーター、一級施工管理技士。
設計コンセプト
「実家の附属建物である鉄骨造の車庫と倉庫を、若い世帯のための住まいにリノベーション。車庫部分の機能は維持しつつ、街を見下ろす北側に開口を設け、開放的に。必要十分な居住スペースが確保できるかどうかが、設計初期段階の大きなテーマであったが、屋根裏の空間を最大限に活用し、寝室・くつろぎの場所を捻出することにより、要望をクリアした」
建築データ
■家族構成 夫婦2人
■構造 鉄骨造のリノベーション
■工法 在来軸組工法
■延床面積 合計89.0㎡(約33.53坪)
1階43.1㎡(約13.06坪)
2階45.9㎡(約13.90坪)
車庫21.7㎡(約6.57坪)
■スケジュール 設計期間2015年4月~2015年10月
施工期間2015年12月~2016年5月
■設計監理 ナカノジロウ建築デザイン事務所
■施工 アップルハウス
Z邸間取り
BEFORE
1 納屋
2 個室
3 ガレージ
AFTER
1 玄関
2 LDK
3 LAUNDRY ROOM
4 GRAGE
5 CLOSET
6 BED ROOM