» 2019/05/16/
建築家に店舗併用住宅を依頼するメリットは、異なる機能をうまく融合させ、理想の店と住まいの両方を実現できることだ。
鳥羽さんが手掛けた『鴨島のいえ』は、施主の奥さまが営む美容室を併設している平家の店舗併用住宅である。「どのように店と家とをつなげ、また切り離していくか…。その関係性を考えることから設計を始めていきました」。
いくつもの店舗を手掛けてきた実績を持つ鳥羽さんだが、意外にも店舗併用住宅の設計は初めての経験だったという。
「どうしても奥さんは店と家とを1日に何度も往復する生活になります。できるだけ負担にならないように、日常の作業動線と、仕事の作業動線を少し重ねてシンプルにしました」。
美容室から家へとつながるドアを開けると、すぐに洗濯室や台所まで出ることができる。家事や育児に必要な空間を店側に集約したことで、生活しやすい間取りとなった。
同時に、この工夫は家側の生活音が店まで響きにくいなど、互いの存在感を抑制する効果も生んでいる。建物としてはつながっていながら、店と家とを確実に〝切り離す〞ことにも成功しているのだ。
また、建物と敷地境界との間にできたスペースの使い方も面白い。簡易な屋根を出して 〝さしかけ〞をつくり、外でもない中でもない中間領域が生活において大活躍。
「北側はご主人が趣味の車の整備に使えるように。西側は奥さんが洗濯物を干すことに使えるようにしています」。
店であり、家でもあること。鳥羽さんの考える店舗併用住宅の回答の一つがK邸である。
設計コンセプト
「奥さんが経営する美容室のある店舗併用住宅です。店と家とのつながりを、『家事動線』の延長上にすることで、重なる作業を効率よく出来るようにしています。建物と境界の間に生まれる場所は『さしかけ』とし、第二のユーティリティや趣味のスペースとして有効利用しています」( 鳥羽)
建築データ
■ 家族構成 : 夫婦
■ 構造 : 木造
■ 工法 : 在来工法
■ 敷地面積 : 649.98m2( 約196.96坪)
■ 延床面積 : 合計199.85m2( 約60.56坪)1階 166.13m2( 約50.34坪)店舗 33.72m2( 約10.21坪)
■ スケジュール :
設計期間 2010年4月~2011年6月
施工期間 2011年7月~2011年11月
■ 設計監理 : 鳥羽知夫建築設計事務所
■ 施工 : 島出建築事務所
K 邸間取り
① 住宅玄関
② 子供室
③ リビングダイニング
④ キッチン
⑤ 寝室
⑥ 書斎
⑦ クローゼット
⑧ WC
⑨ 洗面室
⑩ 浴室
⑪ 洗濯干場
⑫ 美容室
【情報掲載日/2016年11月25日】
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