» 2019/07/09/
建築家は、自分が手掛けた仕事を「作品」と捉えることが多い。言い換えれば、いつまでも取り壊されない強さと美しさ、そして個性を持つデザインを追求している。中飯さんも、その一人。普遍的な価値を持った建築を手掛けることは、施主のためでもあり、自分のためでもある。
「優れた職人が使い慣れた包丁を大切にするのと同じで、店舗はクライアントにとって、かけがえのない道具のようなものです。気に入った道具は、ずっと使ってもらえる。その意思が2代目、3代目へと引き継がれれば、やがて老舗になる。常に、そんな建築を提案できるよう努めています」。
普遍性を求めるからこそ、流行には惑わされない。木や漆喰、瓦など本物の材料を使い、年を重ねるほど味わいを増す建築を実現すること。それは、彼が30年前から持ち続けている信念だ。
「竣工した瞬間が、一番美しいようではいけない。30年、50年と使い込むほどに味わいが深まる作品を作り続けたいと思っています」。
お客や職人に愛される建築を創ることで、建物はその地域に長くその姿を留めることになる。「自分の作品を後世に残したい」という建築家の想いは、クライアントの目的と見事に融合し、唯一無二の存在感を放つのだ。
店舗設計を行う上で、常に心掛けていることがある。それは、決して「商売の邪魔をしない」ということ。店や職人の特徴を浮き彫りにするため、無駄な要素をできるだけ排除していく。
「建築的な表現だけによって、そのお店を人気店にすることはできません。過度な表現を行うことは、むしろ店の個性を失わせることになる。スタッフが働きやすく、愛着のある空間をシンプルに形作っています」。
そう言って笑う中飯さんの表情に、作家としてのエゴは一切見当たらない。芸術家と違い、建築家は時として作家性を内に潜ませ、クライアントに寄り添うことで、そこにしかない価値を見出していく。店舗や施設のオリジナリティは、建築家ではなく、クライアントの中に潜んでいるのだ。
「それだけに、クライアントとのセッションは非常に重要です。人は、格好をつけて話をするもの。実際に話している内容と本質が違う所にあることも多い。その部分をしっかりと感じ取り、コンセプトを定めていかなければなりません」。
手掛けた仕事は一度完全にリセットし、いつもゼロからスタートするという中飯さん。店舗に漂う強さと美しさは、頭の中でかいた汗の量が導き出したものなのだ。
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新築
阿南市立富岡小学校プール
阿南市領家町浜田200
■完成/2014年8月 ■施工/田窪建設
設計コンセプト
「阿南市の一番大きな小学校のプール。日本の文化である木造建築の手法を多く取り入れ、日本の小学校にあるプールとして有るべき姿を追求して設計した。子供の背の高さまで杉の材料で仕上られている。子供の記憶に残るようなデザインとした」 (中飯)
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新築
(株)レーザーシステム 徳島事業所
阿南市那賀川町中島414-1
■完成/2013年7月 ■施工/神原建設
設計コンセプト
「世界最先端の技術を研究する施設で、特に玄関ホールのデザインには力を注いだ。研究施設のため階高が高いのでそれを生かし、カーテンウォールの中で空中に浮くような階段をデザインした。夜には階段がLED照明設備となり空間をより美しく見せる」 (中飯)
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新築
菓志道 タカイチ
阿南市那賀川町工地641
■完成/2009年4月 ■施工/深川建設
設計コンセプト
「美味しいフランス菓子を創る有名な店舗設計の依頼を受け、新築当時のままで長く使って貰い将来伝統が感じられる設計とした。玄関前の練り塀や、細長い池、深い庇が店舗への奥行きを出している。洋風の外観ではあるが、ガラス張りでない所は和が感じられる」 (中飯)
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新築
木本歯科医院
阿南市領家町野神327-1
■完成/2011年4月 ■施工/アイシーホーム
設計コンセプト
「医院へのアプローチを白いスロープとし、歯をイメージした真っ白な塀と金属で薄く軽い屋根のデザインが軽快な建物のイメージを創っている。内部はお施主様の拘りから清潔感のある明るい空間となっている。レントゲン室は竜巻時のシェルター(避難場所)となる」 (中飯)