» 2019/07/11/
豊富な知識をベースに集客力と機能性を実現
建築家が持つノウハウは、店舗経営を成功へと導くための大きな武器となる。お客さんが入りやすいデザインに始まり、商品を魅力的に見せるためのアイデア、スタッフが効率的に動くための動線など、売り上げを増やすために必要となる知識やコツを、豊富に備えているためだ。長年にわたって築き上げてきた経験と実績を求め、杉本さんの元にも新築から改装まで多くの依頼が寄せられる。
「たとえばケーキショップの場合、スタッフの動きに一歩の無駄が出るだけで生産性が大きく下がってしまいます。スタッフ一人ひとりの役割や動き方を理解することはもちろん、オーブンや食洗機など設備機器の特性を把握し、職人が効率よく業務を行える環境づくりを追求しなければなりません」。
歯科医院からの依頼も多いが、インプラントや矯正、審美歯科など、同じ業界でも目指す方向性はさまざまだ。杉本さんはクライアントの要望と自らの提案を巧みに融合させながら、集客力と機能性を店舗設計の中に封じ込めていく。建築後も自分が関わるクライアントを大切にし、成功するための方策を一緒になって模索する。そんな真摯な姿勢の積み重ねが、現在の豊富なノウハウへとつながっているのだ。
自分が設計した店舗を見て、杉本さんがいつも感じることがある。それは「クライアントの個性が外観に滲み出ている」ということ。クールさや優しさ、かわいらしさなど、その人が携える世界観を鋭くキャッチし、お客さんに伝えようとする作業を繰り返すからだろう。
「基本的には、地域で愛され、末長く経営できる店舗設計を考えます。東京の銀座にあるような建物を田舎に建てても、地元の人が入りにくいお店になってしまうし、かといって地域に馴染み過ぎると個性が失われてしまう。その絶妙なバランスを見つけ出すのが、私の仕事だと思っています」。
移り変わる流行に惑わされない、普遍的な美しさを建築デザインに込める杉本さん。奇をてらわずに新しいお店としてのインパクトを生み出すという難題と向かい合いながら、一つずつ丁寧に成功へのピースを組み合わせていく。そこに必ずプラスされるのが、心地良い温かさや優しい雰囲気。「色もカタチも、自分が好きなものばかりで構成しているからかもしれませんね」と彼女は笑う。その「好き」を感じ取るアンテナの感度こそが、店舗に多くのお客さんを呼び寄せる秘密なのだろう。
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新築
ptisserie OLIVE
徳島市中吉野町1-13-2
■完成/2009年6月 ■施工/島出建築事務所
設計コンセプト
「パティシエやケーキからイメージは膨らんだ。美味しそうでおしゃれでいて懐かしく、ほっと出来る空間を目指した。また、内部はサークルをモチーフに遊んだ。できあがった外観はまるで、チョコレートとイチゴとクリームのショートケーキみたい」 (杉本)
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新築
斎藤歯科医院
板野郡藍住町住吉神蔵209-1
■完成/2013年4月 ■施工/司工務店
設計コンセプト
「外観の特徴である3つの箱型は、外観のインパクトだけでなく、施主の3つの想い『技・まごころ・環境』も表している。内部は、歯科医院としての機能も充分備えている。また、内外を繋ぐ間を設け、シンプルな中にも木々のぬくもりが伝わる」 (杉本)