建築家が設計する店舗&施設

» 2019/07/15/

竹内郁夫が設計する店舗&施設づくり


変幻自在の思考が

味わいを深める。

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要望を磨き上げ、個性をプラス

 優れた店舗の条件の一つに、雰囲気づくりの巧みさが挙げられる。モダンで洗練された空間を形作ることもあれば、アンティークで味わい深い空間を目指すこともある。それは、お客にとっての心地良さだけではなく、そこで働く人々の豊かさにもつながる大切な要素。クライアントが求めるイメージを的確に捉え、より美しく磨かれたデザインや機能性を提案できなければ、自分がその仕事に携わる必要は無いと竹内さんは言い切る。

 「最近、アンティークなカフェのリフォームを手掛けた際にも、機能性だけでなく、その味わいがさらに増すような設計を心掛けました。たとえば、県外の職人が作ったガラスを用いて作り付けの窓を作成したり、アンティーク加工した天井板にオールドペイントを施したり。どちらも、最後の仕上げは私自身の手で行いました」。

 自分の頭の中にある完成イメージを再現するためには、職人の技が必要となる。その環境が整わない場合、竹内さんは自らが腕利きの職人となり、思い描いた像を具現化する。そこには、既製品では決して実現できない、唯一無二の味わいが染み込んでいる。必ず理想を叶えるという信念が、彼の原動力となっているのだ。

引き出しの多さが可能性を広げる

工事現場で使う仮囲い、サビついた鉄棒、風化した木材。日常で目にするさまざまな風景を、竹内さんは常に独自の視点で見つめ、頭の引き出しにストックしている。店舗設計の際には、引き出しに詰まった数え切れない情報を絡み合わせ、一つの答えを導いていく。時にそれは、低コストと個性を併せ持つ強力な提案になる。

 「自分の建築に、これと言った特徴はないんじゃないかな」と本人は頭をかくが、裏を返せば変幻自在。手掛けた店舗のすべてが、独創的な輝きに満ちている。自らの作家性のみに頼ることなく、クライアントの要望を磨き上げるそのスタイルは、魅力あふれる店舗設計の強い助けとなることだろう。

 「機能面やデザイン面など、どうしても必要だと感じた部分は、クライアントを説得してでも実現したいと考えています。お互いの思いを素直にぶつけ合いながら、最初のイメージを超える空間づくりを実現していきたいですね」と竹内さん。温厚な人柄の裏に隠された強いこだわりで、これからも良質な店舗を世に送り続けるはずだ。

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新築

中華そば 田村

板野郡北島町鯛浜字大西108-1

■完成/2012年12月 ■施工/DEE WORKS

設計コンセプト

「オーナーの希望をかなえつつ、予算内で、この手の飲食店には無いものを

つくることでした」(竹内)

お客はもちろん、朝から夜まで働くスタッフも外の眺めが見えるよう全面ガラス張りに。店長の要望のもと、カジュアルな店舗づくりを実践した。

お客はもちろん、朝から夜まで働くスタッフも外の眺めが見えるよう全面ガラス張りに。店長の要望のもと、カジュアルな店舗づくりを実践した。

屋外に設けた、木材と黒皮鉄の差し掛けスペース。地面のコンクリートが外と内の距離感を絶妙に保ち、落ち着いて食事ができる環境を作り出している。

屋外に設けた、木材と黒皮鉄の差し掛けスペース。地面のコンクリートが外と内の距離感を絶妙に保ち、落ち着いて食事ができる環境を作り出している。

天井の梁を高くすることで、実際の敷地よりも開放的な空間を実現。正面の壁には工事現場の仮囲いを使用しているのも、竹内さんらしい独創的な手法。

天井の梁を高くすることで、実際の敷地よりも開放的な空間を実現。正面の壁には工事現場の仮囲いを使用しているのも、竹内さんらしい独創的な手法。

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新築

治療院

板野郡

■完成/2012年10月 ■施工/勝名建設

設計コンセプト

「治療室、待合、目的のはっきりした室を曖昧な関係にしてリラックスできる場所を考えた」(竹内)

90度の屋根をずらして配置することで、見る方向によって表情を変えるユニークな 外観に。新しい診療所としての話題づくりにも一役買っている。

90度の屋根をずらして配置することで、見る方向によって表情を変えるユニークな
外観に。新しい診療所としての話題づくりにも一役買っている。

窓の外に緑地スペースを設置。アイビー(つる科の植物)が巻き付くワイヤーも取り付けており、爽やかな緑の風景が日々成長していく。

窓の外に緑地スペースを設置。アイビー(つる科の植物)が巻き付くワイヤーも取り付けており、爽やかな緑の風景が日々成長していく。

天井を向いて施術を受けるお客が心地よく過ごせるよう、木材を現した空間づくりとした。格子状の壁が、診療所の開放感をさらに高めている。

天井を向いて施術を受けるお客が心地よく過ごせるよう、木材を現した空間づくりとした。格子状の壁が、診療所の開放感をさらに高めている。

施術を行う個室と待合室を、一本の廊下で区分。建物上部の窓から入ってくる光が、部屋の開口部を通じて建物全体を明るく包む。

施術を行う個室と待合室を、一本の廊下で区分。建物上部の窓から入ってくる光が、部屋の開口部を通じて建物全体を明るく包む。

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