» 2019/07/18/
自分であれば、どのような店に足を運びたいか。とてもシンプルかつ本質的な要素を、野田さんはすべての店舗設計に封じ込める。それも極めて注意深く、繊細に。建築文化の礎を築いてきた欧米の有名建築家には、インテリアデザイナーとしての顔を持つ人物が多いが、野田さん自身も家具デザイナーだった経験を持つ。建築とインテリアへの造詣の深さが「足を運びたい店」を形作る上で大きな武器となっている。
「たとえば何かを食べて『おいしい』と感じる時、味覚や嗅覚などによる判断が2割、後の8割は視覚による効果だと言われています。かっこいい、かわいい、楽しいと感じさせてくれる空間は、お客様にとっても大きな付加価値になる。他店と同じ金額だった場合でも、より満足度を高めたいと思っています」。
理屈ではなく、直感的に気に入ってもらえる空間づくりを目指していると話す野田さん。そのために、空間や家具の配置バランス、照明の効果、建材のエッジの効かせ方に至るまで、ディテールをとことんまで追求する。建築家と家具デザイナーというハイブリッドな感性と、膨大な労力の積み重ねが、訪れる人々を魅了し、リピート率の高い店舗を作り上げるのだ。
店舗や施設の設計を行う際、野田さんが大切にしているキーワードがある。それが「つながる」ということ。彼の言う「デザイン」の定義には、感覚的な美しさとは別に「いかに機能させるか」という要素が大きなウエイトを占めている。
「建物などのハード面だけではなく、人のつながりといったソフト面をしっかりとデザインすることが重要です。たとえば、厨房周りのデザインを工夫すること。厨房をステージに見立てて、プロとして立ち振る舞いをいかにスマートかつカッコよく見せられるかなど、オーナーの存在感を際立たせると、お客様とのコミュニケーションが取りやすい空間にすることができる。また、新たな交流や話題性を生み出すために、あえて地元デザイナーの家具を用いることもあります」。
人が自然と集まる場所には、やはり建築の中に何かしらの理由が隠されている。その答えをクライアントとの打ち合わせから引き出し、カタチにしてくれるプロフェッショナルの一人として、野田さんは高い評価を受けている。
彼の手掛けた店舗に足を運べば、その理由を肌で感じることができるだろう。
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新築
cafe polestar
勝浦郡上勝町大字福原字平間32-1
■完成/2013年12月 ■施工/コール
設計コンセプト
「ここに来れば上勝町を五感で感じることができるようにデザインした。北側に大きな開口と上勝舞台と呼ぶ外部テラスを配置し、上勝とカフェが一体となるようにした。*LAN」(野田)
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改築
Link Point SAIRAI
美馬市脇町大字猪尻西分140-2
■完成/2014年8月 ■施工/コール
設計コンセプト
「オーナーが『この場所で多くの人がつながれる空間にしたい』との想いからスタートした。少しでも『想い』がお客さんに届けられるように温かみがありながらカッコよく飲食ができる空間にデザインした 」(野田)
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改築
ナガヤプロジェクト
徳島市沖浜町大木247
■完成/2014年9月 ■施工/コール
設計コンセプト
「本改修工事においてまんべんなく直すのではなくデザインに強弱をつけた。古い所はその当時の面影を残したままに、そしてオーナーが一番よく居る場所(厨房兼事務所)を新しいステージに変えた。古い空間に新しい白い箱をいれた感じで。*LAN」(野田)
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改築
親子カフェ はこいろ
徳島市万代町5-71-4
■完成/2013年12月 ■施工/伸ホーム
設計コンセプト
「万代埠頭の倉庫の改修工事である。かなり大きな倉庫のためにフルリフォームを断念し、どこに集中して改修するのかを考え、必要なところだけバランスを取りながらデザインした。*LAN」(野田)