建築家と素敵な家づくり
一人の建築家との出会いが、家族の未来に大きな変化をもたらすことがある。今回のお施主様が『建てようネット』を通じて出会ったのは、女性建築家の樋口さん。奥さまの言葉には、彼女との出会ったことへの喜びが凝縮されている。
「キッチンに立ちながら、ふと空を見上げることが増えました。住むほどに、樋口さんがどれだけ私たちの暮らしを考えていてくれたのかが分かってくるんです。『あ、だからこの場所に窓があるんだ』って」。
ご主人の祖父が大工をしていたこともあり「信頼できる建築家と家づくりがしたい」と思ったことが、建てようネットを利用するきっかけ。何人かとの面談を経た後、樋口さんをパートナーに選んだ。
「樋口さんのご自宅兼事務所に伺った時に『この空間、すごく好き』という感情がわき上がってきて。自分たちも、こんな家に住みたいと思いました」。
打ち合わせでは「どんな家にしたいか」ということよりも「どんな暮らしをしたいか」を積極的に引き出してくれたそう。明るくて開放的な住まいにしたい、洗濯物を室内で干せるようにしたいなど、お施主様からの要望は、あくまで断片的なもの。その奥に潜む本質をすくい上げながら、樋口さんは慎重に設計を手掛けていった。
まず、家づくりにあたって考慮しなければならなかったのが敷地条件。南側に2階建ての民家が隣接していたため、採光計画を慎重に行う必要があった。
その課題を見事に解決したのが、南東に設けた屋根付きのウッドデッキ。ダイニングとリビングにやわらかな光を届けるだけでなく、内と外をつなぐ中間領域としてLDKの開放感を大きく高めている。
「特に意識したのは、内と外との連続性です。ウッドデッキの床にも室内と同じ無垢の杉材を使っていますし、天井の梁もリビングとつながるようデザインしました」。
キッチンに立つと、ウッドデッキの向こうに揺れる木々を正面に捉えることができる。マンションでの暮らしが続いていた奥さまにとっても、理想的な居場所となっている。
また、リビングの南側には、小さな地窓を配置。そこから顔を覗かせる緑の植栽が、何とも言えない心地良さを屋内に運んでいる。玄関の対面に設けた坪庭を含め、小さなこだわりを積み重ねることで、住まいの表情は驚くほど豊かになるのだ。
「樋口さんがつくってくれた最高のキャンバスに、楽しみながら最高の人生を描いていきたい」とご主人。確かなことは、その物語が幸せな色彩に満ちているということだ。
Uさんの夢を叶えた建築家 樋口綾子
設計コンセプト
「条件のよくない面は必要最小限の開口、条件のいい方向に屋根つきのデッキを配することで、光や風、季節感といったものを暮らしに取り込みつつ、落着いた室内としています。全体からみると奥まった場所にある玄関には、玄関戸を開けると楽しめるような仕掛けをしています。また室内物干場と水廻りをコンパクトにまとめたり、キッチンとダイニングをつなげたりと日々の動線にも配慮しています」
建築データ
■家族構成 夫婦+子供1人
■構造 木造2階建て
■工法 在来軸組工法
■敷地面積 232.84㎡(約70.43坪)
■延床面積 合計105.7㎡(約31.97坪)
1階61.47㎡(約18.59坪)
2階44.23㎡(約13.38坪)
■スケジュール 設計期間2013年12月~2014年8月
施工期間2014年9月~2015年3月
■設計監理 a/樋口建築事務所
■施工 K-support
U邸間取り
1 玄関
2 LDK
3 脱衣洗面室
4 物干室
5 フリースペース
6 WIC
7 寝室