建築家と素敵な家づくり
その土地に完全に住み着くことを意味する“土着”という言葉。家づくりにおいて建築家がこの言葉の意味を用いる場合、「その場所で最善のものを目指す」という解釈になる。
それまで賃貸住宅で暮らしていたお施主様は、子どもの成長に合わせて新築を決意。自分たちのこだわりを住まいに封じ込めるために、理想とする建築家とのマッチングを求めて『建てようネット』に足を運んだ。
「お会いしたすべての建築家が、それぞれの個性と魅力を持っていました。最終的に伊月さんをパートナーに選ばせていただいたのは『この人とならワクワクしながら家づくりができそうだな』と感じたからです」。
ご夫婦にとって特に印象的だったのが伊月さんの事務所。
「すごくオープンな雰囲気で、アウトドアな雰囲気と遊び心が融合していました。まさに家づくりのヒントが満載でしたね」とご主人。空間の奥行きを高めていた大きな鏡や、居心地の良いロフトなど、ご夫婦が一目惚れした要素は、家づくりの中にも活かされている。
「そんなふうに言ってもらえるとうれしいなあ」と頭をかく伊月さん。がっちりとはまったお互いのフィーリングが一つとなり、地域の暮らしに美しく“土着”した住まいを生み出していくことになる。
「この海の向こうに花火が上がるんです」。
最初の打ち合わせで聞いたお施主様のつぶやきを、伊月さんは今でもよく覚えている。「海の見える家にする」という思いのもと、家族が集うリビングを2階に配置。杉材が張り巡らされたナチュラルな空間からウッドデッキに出れば、小さな渡船場の向こうに美しい海が広がる。
「踊り場の上部に設けた中2階からも、ちょうど海が見えるんです。わが家に友人たちが集まる機会も増えましたね」。
切妻屋根の形状を活かしたリビングを、より開放的に演出するのが南側と東側に設けた大きなガラス窓。深い軒で太陽光をコントロールしているため、日中も過ごしやすい。
リビングの東側には、ゆっくりバーベキューが楽しめるほど広いテラスを設置。このテラスは「庭の屋根」の役割も兼ねており「休日に趣味の車をゆっくりとメンテナンスしたい」というご主人の要望を叶えた。
「開放的な空間で、のびのびと子どもたちを育てたいという夢も見事に叶えてくれました。毎日この家に帰ってくるのが本当に楽しみなんです」。
海、庭、そして住まい。すべての環境を最大限に活かした住まいが、地域に土着した暮らしを彩っていく。
1961年生まれ、A型、射手座。私学文系に進学するも、経済学についていけずリタイア。その後建築家を目指し建築デザインの学校に再入学。徳島、大阪の設計事務所を経て独立。一級建築士。
設計コンセプト
「鳴門市『内の海』で海を望む場所に建つ住宅。十分な広さのある敷地ではあるが、あえて2階に家族の集うリビングルームを配置した。夏には海峡から花火が上がり海側にあるお隣の大きな樹木も借景できるという『眺望』を重視したためである。リビングの二方はガラス窓とし、一間の奥行きがある軒を巡らせ縁側をつくり、その先に庭に見立てた大きなテラスを設けた。また、テラス下は1階部分の本来の庭に対しての大きな屋根であり、家族が雨の日も遊べる場所となる。上下階とも外部に解放された気持ちの良い住まいを目指して計画しました」
建築データ
■家族構成 夫婦+子供2人
■構造 木造2階建て
■工法 在来軸組工法
■敷地面積 298.95㎡(約90.43坪)
■延床面積 合計151㎡(約45.67坪)
1階93.04㎡(約28.14坪)
2階57.96㎡(約17.53坪)
■スケジュール 設計期間2014年12月~2015年9月
施工期間2016年1月~2016年7月
■設計監理 moon at.
■施工 島出建築事務所
I邸間取り
1 玄関
2 ホール
3 シューズクローク
4 主寝室
5 ウォークインクローゼット
6 子ども部屋
7 洗面脱衣室
8 倉庫
9 LDK
10 和室
11 バルコニー
12 ロフト