» 2019/08/09/
建築家
住宅[ 徳島市・O邸]
「古い建物をリノベーションすることで、その価値に変化が出るという点が、僕にとってはビビッとくる」という中野さんにとって、1Fがご主人のお父さんが営んでいた豆腐工場、2Fは倉庫(兼卓球場)、鉄骨造2階建てのO邸のリノベーション案件は、非常に魅力的で、かつ刺激的なものだったそうです。
「鉄骨造30年モノで、室内に柱などがなく、がらんどう。構造の強度も十分だし、これならもっと価値を持たせられる家にできそうだと。一般的に、2~3000万円かけて新築するところを、リノベーションだったら1000~1500万円、ぜいたくに2000万円かければたいていのことが可能になります。予算的な面からも、条件さえ合えばOさんのように、リノベーションをご提案することが多いですね」(中野さん)。
かくしてO邸も、中野さんの手によって劇的な変化を遂げることになりました。
O邸は、その台形の建物が特徴的でした。方形よりも間取りや動線の取り方が難しく思われがちですが、鉄骨造だからこそ可能だった自由度の高さを活かして、斜めの線に沿ってLDKを展開。階段の位置からも、上りきった正面にLDKが配置するような間取りとしています。
「玄関を入ってすぐにキッチンというと、主婦的な感覚からすると嫌がる人が多いかもしれませんね。でも、ウチはある意味パブリックな感じというか、人もよく集まりますし、むしろ好都合なのかも。そんなことよりも、キッチンから洗濯機、洗濯干場になるサンルームまで一直線という、便利な動線で快適に毎日を暮らせるという方が嬉しいですね」(奥様)。
Oさんの要望のひとつでもあった「家事動線を便利にする」という点は、こうしてクリア。その他、「1Fを駐車場にする」「夫婦の寝室と、他に個室を1~2部屋取る」という要望もあったのですが、これをクリアするのは難しく、そこで隣接する母屋も活用するという案が浮上。木造の母屋と鉄骨造の倉庫棟を、2階に通路を作ってつなげるというプランが採用されました。
玄関を入ると正面にLDK、左手の廊下へ進むと母屋の寝室へと続く。パブリックとプライベートがしっかり分けられたルートの構成は、来客の多い家族にとって高い利便性となっています。
実はOさんは、ハウスメーカーやリフォーム会社に依頼するというのも考えのひとつではありました。しかし、中野さんと話をするうちに、冒頭にもある“価値の変化”という考え方に共感したのだとか。
「お金の話をしていた時に、中野さんが『必要なところにお金をかけて、要らないところはとことん削る』『他と比べて安くなるかどうかはわからないけれど、価値のあるお金の使い方になることは約束する』と言ってくれて。お金はもちろん安いに越したことはないけど、それ以上に、“価値のあるお金の使い方”という言葉に惹かれましたね。建築家に仕事をお願いする意味っていうのは、まさにそこにあるんじゃないかな?と、改めて思いました」(奥様)。
Oさんの夢を叶えた建築家
設計コンセプト
「そこには母屋と廃業した豆腐工場があった。引退はしていたが元気だった父親が突然倒れた。病院での闘病リハビリ中に、母屋をユニバーサル住宅にリノベーション。この仕事を通して、離れて暮らしていた長男家族の心が動いた。使われなくなった豆腐工場跡をコンバージョンして住むことを決めた。機能や見た目のデザインをすることにとどまらず、かつて家族が集ったこの場所に、賑わいを取り戻すお手伝いをさせていただいた。家族の関わり方をもデザインさせていただき、建築家冥利に尽きる仕事だった」
設計のこだわり、苦労したところ
「鉄骨造の豆腐工場跡の変化のある形状を、リビングダイニングひと間で利用し大らかな広がりを求めた。すると、寝室などプライベートな空間が工場跡からはみ出さざるを得ず、母屋の2階を利用することとなった。このふたつのつなぎ方には少し工夫を要した。つなぎ目に、浴室やクローゼットを配し用途を持たせることにより、つなぎ目をただの通路とせず、プランに馴染ませた。また、ゲストの多いこの家族にとって、本当のプライベートを確保する切替えの空間になった」
■家族構成
施主、妻、子供2人(27歳、21歳)
■構造・工法
鉄骨造リノベーション
■延床面積
合計 168.6m2(約51坪)
1階 24.6m2(約7.45坪)
2階 103.3m2(約31.3坪)
■スケジュール 設計期間
2010年3月~2010年7月
■工事期間
2010年9月~2010年11月
■設計監理
ナカノジロウ建築デザイン事務所
■施工
谷崎建設・設計事務所

1 ENTRANCE
2 WC
3 P.Room
4 E.V
5 KITCHEN
6 DINING
7 BATH
8 DATUI
9 W.I.C
10 M.Bed.r