» 2019/08/02/
建築家
住宅 [小松島市・O邸]
Oさんのリフォームは、計画を始めた時点から前途多難でした。「鉄筋コンクリート造壁式構造」という、一見すると強い構造のように感じますが、所見した兼間さんによると「いつ崩れてもおかしくないような構造」だったのです。「コンクリート壁自体は問題ではありませんでした。問題は、お城と一緒でお神楽になっていたこと。梁の上に上階を乗せるというお神楽式の建て方は、どうしても梁の部分が弱くなってしまうんですね」(兼間さん)。
それでも、リフォームとして進めたかった理由は、ご主人のお父さんが建てた思い入れの強いお家だったからです。「これはもう、理屈ではないんですね。お金では割りきれない思いがある家だったものですから、あくまでリフォームにこだわったんです」(ご主人)。
そうして始まったリフォームですが、壁式構造の特性上、外枠はもちろん、室内の壁も取り除くことはできませんでした。つまり、自由に間取りを作ることができなかったのです。それどころか、耐性の弱さ故に新たに壁を足す必要も。そこで考えられたのが、リビングとダイニングの間に設置された太くて大きな柱のような壁でした。
「リビングに新たに壁を1枚入れることで耐性を確保する。それを中心としてプランを考えてみよう、というところがスタートになりました。ここに壁を作ること、そして新たにキッチンとする場所も含めて2階を支える構造にしたんです」(兼間さん)。
この壁がなかったら開放的な空間になるのに…と思えなくもないですが、「強い家にする」という目的の達成が何より最優先でした。
「普通の木造の家でも大黒柱と呼ばれるものがあるわけですし、あまり気にしていません。この存在感は、この家を支えてくれていると考えると、愛着さえ感じさせてくれます」(ご主人)。
O様邸のような案件こそ、建築家の技量が問われる仕事もないかもしれません。というのも、兼間さんは沖洲幼稚園や八万小学校など公共事業の耐震診断をいくつも手がけており、その知識と経験がいかんなく発揮されたのです。
一般的なハウスメーカーやリフォーム会社では難しい案件だったことでしょう。いやむしろ、「40年も大丈夫だったんだから、これからもこのままで大丈夫だろう」などと軽く引き受けられでもしたら、そちらの方が大問題。そう考えると、「壁の量を計算して、外壁に入っているひび割れの長さも全部測って…と、構造体の確認は特に念入りに行いました」という兼間さんだからこそ成し得た、快適性とともに安全性も確保したリフォームと言えるでしょう。
設計コンセプト
「新築ではなく改装リノベーションだとしても、建築主が住んでおもいきり心地よい室内を設計しなければならないと考え、暖かくやさしい気持ちで設計しました。全て撤去し、構造体のコンクリート部分のみを遺すところから始まった」
設計のこだわり、苦労したところ
「既存コンクリート壁は全て耐力壁なので自由な間取りが難しく、また補強のために必要な耐力壁を組み入れ、より複雑になった。外壁には浮きやひび割れがあり、特にひび割れは計98メートルもの長さであった。そのため、構造体の確認は非常に重要だった」
■家族構成
施主(46歳)、妻(41歳)、子供2人(9歳・8歳)
■構造・工法
鉄筋コンクリート造壁式構造
■延床面積
合計 157.60m2( 約47.67坪)
1階 114.61m2( 約34.67坪)
2階 42.99m2( 約13.00坪)
■スケジュール
設計期間 2012年12月~2013年6月
工事期間 2013年6月~2013年12月
■設計監理
兼間建築設計研究所
■施工
姫野組
O邸間取り
1 ポーチ
2 玄関
3 居間
4 食堂
5 台所
6 ピアノ
7 テラス
8 洗い場
9 便所
10 和室
11 寝室
12 浴室
13 脱衣所
14 子ども部屋