» 2019/05/18/
「いつかは平屋を…」と憧れは持っていても、敷地の広さや予算との兼ね合いなど、さまざまな理由で最初から諦めてしまってはいないだろうか。
そんな時こそ、頼りになる建築家の出番だ。U邸は「内野さんであれば、どんな土地でも理想どおりの家を建ててくれる」と信じた施主の思いに応えた街中の平家である。
『南昭和の日溜まり』と内野さんが呼ぶU邸が建つのは、徳島市の中心部に位置する五角形の変形狭小地。もちろん、住宅地だから周囲は家に囲まれている。「平屋向き!」とは言い難い立地条件だ。
「この敷地に至る前の街中の超狭小敷地では、1階部分を駐車場にする3階建てという案も出たのですが、ここは住宅地ですし、このご家族に似合うのはやはり平屋だなあと思って、最終的には敷地の形に素直に沿わせた平屋になりました」。
施主からの「あたたかい家」という要望を実現するにあたり、内野さんが参照したのが初期キリスト教教会の「バシリカ」という建築様式。南北の隣地境界線に沿わせた長方形の低い建物に個室群と水まわりをそれぞれ配し、その間にできるひし形の空間の屋根をぐっと持ち上げて家族が集まる居間とした。その段差部分に南側はハイサイドライト(風井戸の窓)を設け、北側はロフトとした。個室群の窓は低く小さくしながら各室に遮光可能なトップライトを設けてプライバシーを守る。ロフトは居間とつながって立体的で豊かな空間をつくりだしている。
ひし形の短辺二辺にあたる広い土間が玄関。家中をそれ一台で暖める薪ストーブを置き、ご主人が休みの日には自転車を整備したり、南側にはみんなの本があるライブラリー(図書室)がある。
街中の変形狭小敷地であってもここちよい平家は可能である。U邸はその証明となる一軒だ。
設計コンセプト
「周囲を住宅に囲まれた、静かな町の『くぼみ』のような五角形の変形敷地。矩形をむりやり当てはめずに、敷地の長辺に沿っておかれるふたつの直方体。二つの低い直方体。南側の個室群は低く抑えてそれぞれトップライト(遮光可能)で採光。北側は水回りとその上にロフト。間のひし形のスペースは家族の木質空間で、いつも心地よい音楽が流れている・・・」(内野)
建築データ
■ 家族構成 : 施主・妻・子供3人
■ 構造 : 木造
■ 工法 : 在来工法
■ 敷地面積 : 185m2( 約56坪)
■ 延床面積 : 合計 107m2( 約33坪)1階 107m2( 約33坪)
■ スケジュール :
設計期間 2013年9月~2014年4月
施工期間 2014年6月~2015年1月
■ 設計監理 : 内野設計
■ 施工 : 新井建設
U邸間取り
① 玄関土間
② 下足室
③ トイレ
④ 浴室
⑤ 脱衣室
⑥ 洗面室
⑦ クローゼット
⑧ 仕事場
⑨ 寝室
⑩ こども室
⑪ デッキ
⑫ ライブラリー
⑬ 居間
⑭ ロフト
⑮ 納戸
【情報掲載日/2016年11月25日】
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