» 2019/08/03/
建築家
住宅 [吉野川市・K邸]
築25年弱。その間、床暖房を新たに入れたりトイレを替えたりと、部分的なリフォームは何度か行ってきたKさん。しかし今回のリフォームでは、間取りの再考を含めて1階のすべてをリフォームするという決断に至りました。その理由こそ、原さんとの出会いだったのです。
「友人の家が新築したというので遊びに行ったら、そこがとても素敵なお家だったんですね。本当にゆっくりできて、時間を忘れるほど長居してしまったそのお宅が、原さんの設計というのを聞いて。建築家というのはすごい仕事をされるんだなぁ、と感心したものです」と、施主は原さんの仕事を知ったきっかけを話してくださいました。
そのご友人から、「ちょこちょこリフォームしててもダメよ。やるなら一気にやんなきゃ。プロにお願いすれば理想通りに、理想以上になるんだから」と諭されたKさんは、その言葉を信じて大規模なリフォームを、そして原さんに設計を依頼することを決心したそうです。
Kさんのお宅は、ご主人が図面を書き、大工と二人三脚で建てたもの。「大工さんが夫と同い年で、あーでもないこーでもないと言いながら、楽しそうにやっていたのを覚えています」。その思い出を大切にしつつ、柱や壁を増設して耐震性を補強し、かつ足を悪くした奥様が住みやすいようにするというのが、今回のリフォームの大目的でした。
玄関から取次を通って室内に入ると、そこからはバリアフリー仕様。広めにスペースを取ったキッチンは使いやすく、またそこを抜けるとすぐに寝室、その横には水回りを配置(浴室・便所)。車で外出して買い物に行った時などは、裏の勝手口から入ってすぐに納戸やキッチンに行けるように・・・と、高齢者がいかに住みやすくなるかということに重きを置いた設計に。白を基調とした木質感のある佇まいもまた、落ち着きのある暮らしの演出に一役買っています。
もうひとつ特筆すべきは、リビングに据えられた仏壇です。一般的に、仏壇を置くために仏間を造る方も多いですが、Kさんのお宅ではあえてリビングに。そもそも施主がご友人の家を見て気に入ったのも、同様にリビングにビルトインされた仏壇であり、自身のリフォームでも採用した形となります。
「僕は常々、思っているんです。ご先祖さんも家族と一緒にいたいと思っているはずだと。あくまでお施主さんのご意向のもとではありますが、インテリアに合わせた仏壇の設計は、よく提案させてもらっていますね」(原さん)。
「毎週、打ち合わせを重ねることで、お互いを深く理解することが出来ました。その結果、何の迷いもなくお任せすることができ、想像以上の空間が完成しました。こちらの意図も趣味も最大限に汲み取っていただき、心から満足しています」(施主)。これからもずっと、家族の想いを宿し生まれ変わったこの家で住み続けていく。施主の希望を見事に叶え、幸福感に満ちる時間を生み出したのは、紛れもなく建築家としての原さんの仕事です。
設計コンセプト
「御主人が若き日に大工と一緒になって精魂込めて建築した住宅を、現代の生活スタイルに適応させる事が主目的。そして、改修後の住宅を終の棲家と位置づけ我々が関与することでクオリティーが向上し、満足度も高める事ができた好事例の住宅である。尚、思い出の対象となっている外観には極力手を付けず、材質や色彩改修にとどめた」
設計のこだわり、苦労したところ
「耐震診断の結果、不可となった建築を現行法規に適合させる為には基礎や耐震壁を増設する必要性が判明。それでも、柱や梁の増設をしながらも明るく清潔感が溢れる住空間に変貌することを望まれた。我々は、施主の希望を最大限実現すべく、壁や窓を纏めて整理して配置、色彩は白を基調として採用。木質感も併せて醸しだす事を心掛けた。1階の室内に於いては、既存の名残は一切消し去リ、階段のみ既存に少し手を加えて対応した。隣接した車庫はそのまま、残したいとの希望があり、屋根材の葺替えと鉄部の塗装改修によって新築同然との評価を得る事が出来た」
■構造・工法
木造2階建・在来軸組工法
■延床面積
合計 149.42m2(約45.2坪)
1階 79.56m2(約24.07坪)
2階 69.86m2(約21.13坪)
■スケジュール
設計期間 2011年11月~2012年2月
工事期間 2012年7月~2012年11月
■設計監理
㈱原建築設計研究所
■施工
ユタカホーム
1 ポーチ
2 玄関
3 仏壇
4 食堂
5 厨房
6 濡縁
7衣裳室
8 寝室
9 洗面室
10 便所
11 脱衣室
12 浴室
13 納戸
14 勝手口