» 2019/05/28/
少子化や高齢化を主な理由として、家族の在り方が変わりつつある。さまざまな世代が一軒の住まいの中で暮らすには、価値観が異なる多様なライフスタイルを包み込むような家づくりが必要だろう。
『多世帯で暮らす家』と名づけられたM邸は、新居照和とヴァサンティの2人による新居建築研究所からの〝新たな暮らし方〞の提案でもある。
「親子ではありますが、価値観の異なる別々の世帯が一緒に生活する住まいです。足腰の弱ってきた高齢者がいらっしゃり、バリアフリーを超えて心身のリハビリができる平家を考えました」。
そう語る新居さんのプランは、一人ひとりが毎日を過ごす居室を独立させた上、長くゆったりした廊下によって適度な距離を置くという設計。互いを尊重しながら支え合い、過度に干渉しない見事な間取りとなっている。「心身ともにストレスのない距離感の家が一番ですから」とヴァサンティさんは微笑む。
また、このM邸は2人の介護経験が随所に生かされているのだそう。たとえば、新居さんが造園計画した約40本もの樹木は、長い廊下を歩く度、四季折々の表情で目を楽しませてくれる。これは新居さんの母親が、自宅の庭で草木の成長を喜ぶ様子から大きなヒントを得たものだ。
「やがては森の中の一軒家のようになるでしょう。季節の移り変わりが実感できるのは嬉しいものです」と新居さん。
諸事情により設計から約8ヵ月で完成したM邸だが、苦労した甲斐あって、どの方も悦ばれているという。
設計コンセプト
「少子・高齢化、人口縮減化時代に入り家族の有り様が変わっている。家族各々の価値観やライフスタイルを大切にしたい熟年世代が共に暮らす家をつくる。多彩な家族構成による新しい暮らし方を生む提案でもある。各個人の暮らしへの価値観を尊重しながら、共に暮らす楽しさや安心感、家族への思いやりがもてるような空間で、運動能力、感覚機能、心理・精神機能を豊かに働かす住空間を目指す。テラスを挟んだ個室と広間をつなぐ長い廊下は、様々な緑の風景が楽しめ、バリヤーフリー化した縁側やテラスにも廻ることができる。雨の日でも、長い廊下は格好の心身のリハビリ空間になる」( 新居)
建築データ
■ 構造 : 木造
■ 工法 : 在来軸組工法
■ 敷地面積 : 1360.58m2( 約412坪)
■ 延床面積 : 合計 216.815m2( 約66坪)1階 180.05m2( 約55坪)
車庫 36.765m2( 約11坪)
■ スケジュール :
設計期間 2014年7月~2014年10月
施工期間 2014年10月~2015年5月
■ 設計監理 : 新居建築研究所
■ 施工 : アズマ建設
M邸間取り
① ポーチ
② 玄関
③ 中庭
④ ユーティリティ
⑤ 個室 1
⑥ 客間
⑦ 広間
⑧ 個室 2
⑨ 洗濯干し場
⑩ 個室 3
【情報掲載日/2016年11月25日】
その他の平屋特集はこちらから