» 2019/05/29/
高知市の中心、小高い山の上に1960年代に造成された昔の住宅地。家々の間は車が入ることのできない細い路地で構成され、今も昭和の濃密な人間関係が残る。そのエリアに建てられたのがI邸だ。
「以前に住んでいた場所に戻りたい。それが施主の願いです。親子3人が暮らすため、2階建ても考えましたが、敷地条件などで断念しました」と新居さんは当時を振り返る。
改修する平家は、およそ半世紀以上が経過しており、工事が進むごとに抜本的問題が発覚するような状態だった。結果として使える部分だけを残し、後は大規模なリノベーションとなった。
小さな三角地の狭い空間を最大限に生かすため、梁組を露わにして、トップライトから光を取り入れる構造に。2つの洋室をつなげて南向きの大きなLDKをつくり、東から南にかけて、L字型に屋根を掛けた縁側を回している。
「ここからは隣家の屋根越しに高知市が一望できるんです。とても贅沢なロケーションですね」とヴァサンティさん。
I邸のすぐ北側には春になると桜が咲く公園があり、部屋の窓からは美しい花を愛でることもできるという。新居さんは「庭のスペースは小さいですが、隣の公園、眼下に繋がる路地と近隣の風景が庭の代わりにするという考え方です」と笑う。
わずか20坪という小さな平家を生まれ変わらせた2人。どの部屋からも緑のパノラマが広がる『街を見渡す再生小住宅』は、今日も家族の幸せを生み出しているはずだ。
設計コンセプト
「車で上がれない小さな三角地でも、ここに戻りたいという建築主の想いがこもる老朽化住宅の再生である。市街地の小高い山に、1960年頃建設された住宅地。眺望がよく、近隣との気さくなおつきあいが残り、津波から安心な場所で、市街地を見渡せる桜の木で囲まれた公園がすぐ上にある。緑の街並みを見る東と南面に、屋根のあるパーゴラをかけ縁側をまわす。延べ床面積20坪の狭小さを感じさせないように、収納を工夫し、広間と2つの個室を配置する。各部屋は大きな屋根が覆っているように拡がりをつくり、空と緑をつなげ、心地よい風が抜けるゆったりした空間を生む」(新居)
建築データ
■ 家族構成 : 親子3人
■ 構造 : 木造
■ 工法 : 在来軸組工法
■ 敷地面積 : 137.77m2( 約41.7坪)
■ 延床面積 : 合計 60.36m2( 約18.3坪)1階 60.36m2( 約18.3坪)
■ スケジュール :
設計期間 2011年6月~2011年11月
施工期間 2011年11月~2012年4月
■ 設計監理 : 新居建築研究所
■ 施工 : 近森建設
I 邸間取り
① 玄関
② 夫婦寝室
③ 広間
④ 子供室
⑤ テラス
【情報掲載日/2016年11月25日】
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