» 2019/08/07/
建築家
住宅[ 徳島市・K邸]
K邸に入ると、ホールを抜けて左手にリビング、そして正面にダイニングキッチン。そこですぐに目に飛び込んでくるのが、立派な大黒柱と天井の梁です。聞くと、リフォームにあたって天井をはがしたところ、それまで隠れていた立派な梁が出てきたとのこと。
「とても素敵な雰囲気でしたし、何より、奥さんのお父さんが大工さんと一緒に選んだ梁だという話も伺って、見せない手はないなと思いました」(杉本さん)。
その梁を支える材として、また大黒柱のような存在として、桧の木を新たに設置。以前、LDKと洋間とを仕切っていた壁を抜いたことで強度が下がってしまうために柱が必要となったのですが、実はもっと深い意味があります。それは、“ つないでいく”ということ。
「おじいちゃんが建てた家を私たちが引き継ぎます。そこで、おじいちゃんの想いの込もった梁を残すと同時に、私たちの想いを込めた大黒柱を入れたんです。これから先、息子たちに継いでもらう時に、家族の想いも一緒に感じてもらえたらいいな、って」(奥様)。
そもそもリフォームのスタート地点は、個室に区切られていたLDKと洋間を開け放って(DKでさえ、つながりが良くなかった)、明るい家にして欲しいというオーダーでした。そこで、玄関ホールとLDK、洋間とLDKをそれぞれ区切っていた壁を撤去。ひとつの大きな空間として、さらには西側の建物にあったランドリースペースへも靴の履き替えなしで行けるように動線を取り、その途中にクロークを配して日常的な着替えなどができるようにしました。
「クロークで着替え終わったら、脱いだものをすぐに隣のランドリーへ。また、以前は居間の片隅にあった仏壇の位置も無理を言って変えさせてもらったり・・・と、“生活の仕方も変えてみませんか?”という提案をさせてもらいました」(杉本さん)。
仏壇の位置を変えるというのは、家族にとっては大きな問題です。しかし今回のリフォームが、生活の仕方について、また今後の生き方について、家族間でしっかりと話し合う良い機会になったと言えるでしょう。
実はKさんのお宅は、今回リフォームした建物の他に2棟が並立しており、ご夫婦とお父さん、2人の息子さんがそれぞれの棟に自室を持っていました。ともすればバラバラに過ごしがちな家族が、ひとつに集まれるような場所を作ることこそが大きな目的だったのです。
想いをつなぎ、家族がひとつになる場所を創出する。単なる形だけのリフォームではなく、住まい方、そして家族としての在り方までを提言するという建築家ならではの仕事が、この「丸太柱のいえ」に表れているのです。
Before
after

天井には天然の杉、ダイニングテーブル脇にある既存の柱の周りにも杉板を貼るなど、随所に自然素材へのこだわりを配している。ちなみに、リビングとを隔てる障子は吉村障子。四周の枠の幅と桟の幅が同じで、引き違いの障子が閉まっている時も一枚のように見え、すっきりとした印象。

美しい吉村障子を開け放てば大空間のLDKとなり、大黒柱が心の拠りどころに。「じいちゃんも私らも、息子たちも、よくリビングでゴロンと寝転がっていますね(笑)」とご主人が言う通り、かつて閉ざされた洋室だった空間は、家族が自然と集まるのどやかな空間へと変貌を遂げた。
Kさんの夢を叶えた建築家
設計コンセプト
「つくる、食べる、くつろぐ、勉強する、片づけ、をひとつに!! 改装前には、小さく区切られ、動線も悪く片づける場所もなく困っていた居間と食堂・台所を丸太の柱を中心に、のびのびと過ごせるお部屋にかえました」
設計のこだわり、苦労したところ
「今回は家族が集う、居間と台所・食堂を中心に、水回りも含め、住み方をかえる改装を目指しました。玄関廻りまで取り入れた大きな空間とともに、適材適所の収納をもうけ、主婦楽ちん!家族ゆったり!な住まいとなりました。また、外観の入母屋の象徴するような、立派な構造梁が屋根裏に隠れていました。これは建てる時の大工さんが選んだ梁で、おじいちゃんの自慢でもありました。今回の改装ではこの立派な梁を出すとともに、海部に足を運んでお願いした丸太の柱を入れました。居間と食堂の間の空間を締める障子は吉村障子です。骨太の組子が空間を締めてくれます」
■家族構成
施主(46歳)、妻(49歳)、父(79歳)、子供2人(18歳・16歳)
■構造・工法
木造・在来軸組工法
■延床面積
1階 72.963m2(約22.11坪)
( *リフォーム部分のみ)
■スケジュール 設計期間
2013年6月~2013年10月
■工事期間
2014年1月~2014年3月
■設計監理
アトリエ・クー
■施工
司工務店
1 玄関
2 ホール
3 リビング
4 クローク
5 台所・食堂
6 便所
7 浴室
8 洗面脱衣