» 2019/05/20/
自分の設計した家に住んでいる建築家は意外と少ない。しかし、ほかならぬ自分の家だからこそ、実現できることがあるはずだ。松田さんが2014年に建てた『倚渦』は、全国の建築家からも大きな注目を集めた平家の一つである。
「ここ数年、ずっと建築で表現してみたい3つのテーマがありました。現時点における到達点が『倚渦』ですね」。
松田さんが考え続けているテーマとは「素材」「曖昧さ」「可変性」。コンクリートと金属、ガラスと木材を用い、それぞれの素材のディテールやフォルムを際立たせるための使い方を考え抜いたという。
さらに、土間や濡縁などを含むすべての空間は、全開可能な木製建具や太鼓張りの障子などで曖昧に仕切られ、用途が変えられる可変性を持つ。
「合計で100を超える建具の開閉と使う人の目的次第で、空間の拡大や縮小はもちろん、収納や通路にさえもできる。機能性を最小限にすることで、自由な家が生まれたんです」。
松田さん夫婦と4人の子供たちが毎日を暮らす『倚渦』。平家としては広い部類だが、一人ひとりの気配が感じられるのは、障子や可動家具を基本とした間仕切りのおかげだ。
「ある程度の光や音を通すことで、互いの気持ちを思いやる生活にもつながっていると思います」と松田さんは笑う。
内でもあり、外でもある濡縁から雨戸を開けると、庭から小川に下りられる点も面白い。きっと、松田さんが鳴門で生まれ育った経験が『倚渦』へとつながったのだろう。
設計コンセプト
「機能性を最小限に抑えた空間は、自然環境・家族・不便さとさえ距離を密にし、あらゆる要素と対峙し肯定・尊重する。そして、住み手のアイデアによりマイナス要因は徐々に調和され、未完成の堤に植えられた4本の枝垂桜が周囲にも広がり、水尾を覆う時には地域に馴染んだ暮らしの風景が生まれる」( 松田)
建築データ
■ 家族構成 : 施主・妻・子供4人
■ 構造 : 木造
■ 工法 : 在来工法
■ 敷地面積 : 884.24m2( 約267.9坪)
■ 延床面積 : 合計 211.99m2( 約64.2坪)1階 211.99m2( 約64.2坪)
■ スケジュール :
設計期間 2011年10月~2013年1月
施工期間 2013年5月~2014年3月
■ 設計監理 : MATSUDA Kimihiko
Studio
■ 施工 : 姫野組
M邸間取り
① 玄関
② 土間
③ キッチン
④ 濡縁
⑤ ユーティリティ
⑥ 浴室
⑦ トイレ
⑧ 室
⑨ テラス
【情報掲載日/2016年11月25日】
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