» 2019/06/01/
年月の経過とともに家族のライフスタイルは変わっていく。子供が成長すれば、最初は広々としていた住まいも、それぞれの持ち物が増え、やがて手狭に感じるようになる。
阿南市のN邸は、自然素材を豊富に用いる野口さんの家に施主が惚れ込み、再三のラブコールで完成した住まいだ。何の問題もなかったが、3人目の子供が生まれたタイミングで、今後の生活を見据えた増築を依頼されたという。
「そこで考えたのが、母屋を広くするのではなく〝離れ〞をつくるというプランです」。
しかし、大変なのはそこからだった。離れを建てるための土地は、母屋の奥に残る三角形の狭小地。さまざまなデザインを考えたが、どうしてもしっくりこない。扇型の平家という最終案に至るまで、何度もプランを練り直したと野口さんは当時を振り返る。
「目指したのは、母屋と離れが互いに引き立つデザイン。母屋にはないリビングや書斎、プレイルームの機能を持たせ、誰が過ごしても気持ちの良い空間づくりを意識しました」。
小さなキッチンやトイレ、ホームシアターに薪ストーブまで完備したこの離れは、家族全員が愛する場所となった。
「母屋を建てた時、三角形の土地の頂点に、シンボルツリーとしてトネリコの樹を植えてもらいました。そこから同心円上に広がっていく扇型の離れですから、私は『トネリコ庵』と呼んでいます」。
母屋ではなく、離れとして平家を建てるのも悪くない。そう思える好例がここにある。
設計コンセプト
「3人目の子供さんが生まれ、10年前に建てた母屋が手狭になり、書斎とプレイルームを兼ねた離れを建てることに。敷地が三角形のため配置に苦労しましたが、逆に非日常の面白い空間が生まれました。ホームシアターのスクリーンを上げると、シンボルツリーのトネリコが眺められ、家族全員が集う楽しい団らんのスペースです」( 野口)
建築データ
■ 家族構成 : 施主・妻・子供3人
■ 構造 : 木造
■ 工法 : 在来工法
■ 敷地面積 : 243.17m2( 約73.56坪)
■ 延床面積 : 合計 24.3m2( 約7.35坪)1階 24.3m2( 約7.35坪)
■ スケジュール :
設計期間 2012年2月~2012年7月
施工期間 2012年9月~2012年12月
■ 設計監理 : 野口建築事務所
■ 施工 : 野口建築事務所
N邸間取り
① 家族室
② ホームシアター
③ トイレ
④ ミニキッチン
⑤ トネリコ
【情報掲載日/2016年11月25日】
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