» 2019/07/16/
建築家でありながら、いや建築家であるからこそ、彼は「建物ありき」で店舗を考えない。クライアントの要求を追求した時、その答えは建物の内側ではなく、外側にあるケースも多いからだ。
「たとえば、居心地の良さや癒しの空間を求めた時、ついつい木質系の内装に走ってしまうケースも多く見られます。でも、人工的な木材を使うよりも、生きている木を植えた方がより癒されるでしょうし、外の景観をそのまま取り込む方がさらに良いかもしれない。数多くの店舗の中に埋もれてしまわないためにも、そのお店にしかないコンセプトを導き出すようにしています」。
開さんが設計する店舗に、内と外の境界線をゆるやかにつなぐ仕掛けが多く見られるのも、建物ありきで仕事をスタートさせていないことの表れ。周囲の環境を最大限に活用しながら、枠を超えたメッセージ性あふれる空間を形にしていく。
また、クライアントとの打ち合わせでは、コンセプトの概念図や段階的なCG画像などを積極的に使用。理論と視覚的な要素の両面から、丁寧にイメージの共通認識を図っていく。
お店の存在や特徴を、県内外の潜在顧客に「どう伝えるか」は、建築後の重要なファクターとなる。しかし、その際に必要となるロゴマークの重要性を認識しているクライアントは、意外と少ない。開さんがグラフィックデザインをも含めた提案を基本としているのは、店のコンセプトを極限まで煮詰めた状態で建築設計を行うことで、オープン後の情報発信の質を高めるためだ。
「ロゴマーク作成を平行して進めることで、建築デザインにも、その要素を効果的に取り入れることができる。後付けでは決して実現できない、個性的な店舗設計を行うことが可能になるのです」。
建築家とグラフィックデザイナーがチームとなり、店のイメージを一つずつ磨き上げていくスタイルは、新しい一歩を踏み出すクライアントにとっても心強いはずだ。豊かな経験とアイデアで競合他店との差別化を図りながら、お客に「届く」デザインをカタチにしてくれる最高のパーナーとなることだろう。
店舗設計の目的は、そこで働く人やお客様が満足し、お店が末永く存続してくことにある。その答えはどこにあるのか。きっと正解は、クライアントの数だけ存在するのであろう。確かなことは、未来を見据えた俯瞰的な視点こそが、成功へと導く鍵になるということだ。
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新築
hair salon SAVO
徳島市名東町2-389-13
■完成/2012年1月 ■施工/城南建装
設計コンセプト
「壁と屋根でおおわれた空間は、屋内と屋外が入り交じり、店の中にいても時折顔を出す緑が外にいるような感覚になる。訪れたお客さんは、鏡を前に座ると、その向こうに緑が見える開放的な空間の中で、癒しの時間を過ごす」 (開)
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新築
COZY COZY HAIR
徳島市方上町弁財天33-1
■完成/2008年5月 ■施工/城南建装
設計コンセプト
「居心地のよい美容室にするため、隣との距離を広めにとり、家具で仕切られた半個室のカットスペースと、子供を見ながら施術出来るキッズコーナーを併設したカットスペースがある美容室兼住宅。白をベースにした空間に緑が彩りと心地よさを加えている」(開)
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新築
こころ歯科
徳島市新南福島1-3-20
■完成/2010年8月■施工/アークホーム
設計コンセプト
「徳島市の中心地にあり、目の前には新町川が流れ、その向こうには眉山が見え、美しい眺望が望める場所にある。川沿いにある公園とつなげ、公園の中にあるような歯科医院にすることで存在感を高め、公園を散歩するように気軽に入りやすい医院を目指した」(開)