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» 2014/09/25/

【特別編】建築家の自邸訪問[松田公彦]


特別編

建築家の自邸訪問

建てようネット[徳島]の登録建築家である松田公彦さんが今年3月に自邸を竣工。今号は建てよう

ネットで建てた家シリーズは休載し、松田さんの自邸を紹介していきたいと思います。松田さんの

ディティールへのこだわりが自邸を通して垣間見えます。

建築家・松田公彦

MATSUDA Kimihiko Studio

鳴門市・倚渦(いか)

 

ハナレから自宅を見ると、シンメトリーに美しく映える。母屋とハナレの2つの幅の違う建物に同じ幅の屋根を掛けており、その整然とした佇まいもまた、美しさを助長している。

ハナレから自宅を見ると、シンメトリーに美しく映える。母屋とハナレの2つの幅の違う建物に同じ幅の屋根を掛けており、その整然とした佇まいもまた、美しさを助長している。

 

離れを正面から見る。目の前は道路となっているが、自宅との中間に離れを作ったために、プライベートへの視線を遮ることに成功している。

離れを正面から見る。目の前は道路となっているが、自宅との中間に離れを作ったために、プライベートへの視線を遮ることに成功している。

自宅の庭の目の前には風情豊かに流れる小川。「気が向いたらいつでも釣りに行けるように船も繋留して。もちろん、遊びと仕事は“曖昧”ではないですよ(笑)」(松田さん)。

自宅の庭の目の前には風情豊かに流れる小川。「気が向いたらいつでも釣りに行けるように船も繋留して。もちろん、遊びと仕事は“曖昧”ではないですよ(笑)」(松田さん)。

“曖昧さ”が快適な距離感を演出する、

松田さんの自宅兼事務所「倚渦」

自らが使い、住まう場所だからこそ、この上ないコンセプチュアルな設計に

 鳴門市高島。鳴門海峡に位置する小さな島の中に自宅兼事務所を構えた松田さん。生まれも育ちも鳴門市という松田さんにとってそこはある種の聖域とも呼べる土地であり、そこに自宅を建てるというのは必然だったのかもしれません。加えて、海が好きで釣りが好きという趣味につなげるために、水際が近く、船ですぐに海に出られるという好環境。それは、単に楽しいというだけでなく、自然に触れることからインスピレーションを得て、それを仕事に還元するという意味もあるそうです。

 松田さんの設計に向かうスタイルとしては、「一人ひとりのお施主さんのスタイルに合わせて、自分自身も一回一回チャレンジ。その人に、その場所に合ったコンセプチュアルなプランをまずは提案させてもらいます」というもの。だからこそ、自宅兼事務所の設計に関してはこの上ない挑戦的な設計となっています。

事務所となるハナレは、浮遊感のある2Fに不思議な感覚

 まずはハナレである事務所。鳴門教育大学の目の前ということもあり、人通りや車の通りも多い場所ですが、全面を窓にして開放感を演出。それでも、床を一段下げることによって微妙に目線を外しているため、適度な距離感とプライバシーを確保しています。

 外観を見ると平屋建てのように見えますが、実は2階建て。2階床の四方は1階とつながっており、また1階の窓の高さより少し下の位置を床とすることで、ちょっとした浮遊感を感じられる造りになっています。階下から差し込む光は室内を適度に回り、明るすぎず暗すぎない、適度な心地良さを演出しています。

自宅は“曖昧さ”が特長。家族と、そして地域とのつながりを創出する

 「自宅だからこそのチャレンジ。一般的に、お施主さんに提案しても一瞬で却下されるような仕掛けばっかり(笑)」と、自虐的ながらまんざらでもない笑みを浮かべて松田さんが説明してくださったのが自宅部分。ご夫婦と4人のお子さんが暮らす住まいですが、室内の間仕切りとなる障子を開け放てば、そのほとんどが見渡せるという“超”がつくほどの開放的な設計となっています。

 その開放感は、玄関を入ってすぐに感じられます。土間(兼リビング)からはダイニングキッチン、水回り、夫婦の寝室までを見渡すことができ室内の端から端までが一望のもとに。また、濡れ縁を挟んでは庭、そして敷地の前を流れる小川を望むこともでき、まさに絶好のロケーションを手中にしています。

 「リビングでありダイニングであり、外であり中であり・・・という曖昧さみたいなものを出したかったんですね。確かに、不便だとかプライバシーがないとか思われるかもしれませんが、そんなものは2〜3日もすれば慣れるもの。それよりも、家族がつながったり、地域とつながったりという環境を生み出すことの方が大切だと思うんです」(松田さん)。

 家への想いは、建築家を通して形になる。『建てようネット』としては当然の帰結ではありますが、それを改めて実感させてくれる松田さんのお仕事でした。

 

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写真右奥の扉が玄関。入ってすぐに土間(兼リビング)、段差を経てダイニングキッチン・・と、一歩踏み入れると開放感のあるつながりを感じられ、障子を閉めればしっとり落ち着いた雰囲気に。天井に配置されたトップライトは、日によって、また季節によって様々な光を落とす。

写真右奥の扉が玄関。入ってすぐに土間(兼リビング)、段差を経てダイニングキッチン・・と、一歩踏み入れると開放感のあるつながりを感じられ、障子を閉めればしっとり落ち着いた雰囲気に。天井に配置されたトップライトは、日によって、また季節によって様々な光を落とす。

キッチンから庭方向を見る。雨戸によって閉ざされているが、5mm感覚のスリットが光や水面の揺らぎなど自然の空気感を室内に伝えてくれる。雨戸は全開放が可能で、するととてつもなく開けたビューを獲得する。

キッチンから庭方向を見る。雨戸によって閉ざされているが、5mm感覚のスリットが光や水面の揺らぎなど自然の空気感を室内に伝えてくれる。雨戸は全開放が可能で、するととてつもなく開けたビューを獲得する。

ハナレに向いた子ども部屋。広めの2室は可動式の家具によって仕切ることで4部屋に。それぞれは専用のテラスも持ち、贅沢にプライベートを満喫できるように。

ハナレに向いた子ども部屋。広めの2室は可動式の家具によって仕切ることで4部屋に。それぞれは専用のテラスも持ち、贅沢にプライベートを満喫できるように。

三方をガラスで囲われたバスルーム。「見られたらイヤという子は、全部の障子を閉めて、家族に一声かけてから風呂に入るし、問題なし。むしろ、それがちょっとしたコミュニケーションにもなるんです」(松田さん)。

三方をガラスで囲われたバスルーム。「見られたらイヤという子は、全部の障子を閉めて、家族に一声かけてから風呂に入るし、問題なし。むしろ、それがちょっとしたコミュニケーションにもなるんです」(松田さん)。

あえて窓を設けず、天井を低めに設計したハナレの2Fは、ちょっとした美術館のような趣。1Fから続く足元の窓が床の浮遊感を演出している。

あえて窓を設けず、天井を低めに設計したハナレの2Fは、ちょっとした美術館のような趣。1Fから続く足元の窓が床の浮遊感を演出している。

正面(写真右側)に鳴門教育大学、裏手(写真左側)に自宅。1Fを事務所として使うハナレは、1グリッドを910ミリとして最も収まりが良いように設計されている。

正面(写真右側)に鳴門教育大学、裏手(写真左側)に自宅。1Fを事務所として使うハナレは、1グリッドを910ミリとして最も収まりが良いように設計されている。

濡れ縁から土間を見る。ダイニングキッチンとの段差はちょうど良い感じのソファとなり、テレビを置けばリビングに早変わり。夏場はひんやりと心地良い空間だ。

濡れ縁から土間を見る。ダイニングキッチンとの段差はちょうど良い感じのソファとなり、テレビを置けばリビングに早変わり。夏場はひんやりと心地良い空間だ。

 

土間から濡れ縁の向こうに小川を見る。堤には枝垂れ桜を植えており、いずれキレイな花を咲かせる予定。その風景の中を船で通ったら、さぞかし爽快なことだろう。

土間から濡れ縁の向こうに小川を見る。堤には枝垂れ桜を植えており、いずれキレイな花を咲かせる予定。その風景の中を船で通ったら、さぞかし爽快なことだろう。

 

リビングやダイニングキッチンの延長のような濡れ縁が、中と外をつなぐ“曖昧さ”の象徴。快適さと同時に、絶妙な長さの庇が室内に取り込む光の量を調節するなど、機能性も併せ持っている。

リビングやダイニングキッチンの延長のような濡れ縁が、中と外をつなぐ“曖昧さ”の象徴。快適さと同時に、絶妙な長さの庇が室内に取り込む光の量を調節するなど、機能性も併せ持っている。

建物と目隠しの間へ進むと、子ども部屋のテラスへとつながる。「自由に出入りできるし、子どもたちが大きくなったら夜遅くにそーっと帰ってきたりするんかな? まぁ、それもまた成長の過程なんでしょう」(松田さん)。

建物と目隠しの間へ進むと、子ども部屋のテラスへとつながる。「自由に出入りできるし、子どもたちが大きくなったら夜遅くにそーっと帰ってきたりするんかな? まぁ、それもまた成長の過程なんでしょう」(松田さん)。

松田公彦、自邸を語る

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設計コンセプト

「機能性を最小限に抑えた空間は、自然環境・家族・不便さとさえ距離を密にし、あらゆる要素と対峙し肯定・尊重する。そして、住み手のアイデアによりマイナス要因は徐々に調和され、未完成の堤に植えられた4本の枝垂桜が周囲にも広がり、水尾を覆う時には地域に馴染んだ暮らしの風景が生まれる。」

10月号平面図画像

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