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» 2018/09/21/
そのお店のオリジナリティをいかに見出し、創出するか
秋田町の老舗料亭として名を馳せる『五十鈴』。老朽化した店舗を新築移転するにあたり、建築家の設計を希望していた店主は、建てようネットへ足を運ぶことに。そこで出会った建築家が、独創的な発想で数々の店舗を成功へと導いてきた中川俊博さんだった。彼は、店舗設計に必要不可欠な要素について次のように話す。
「やはり店舗設計は、いかにして特徴を持たせるかが大事。何か一つ抜け出さなければいけないんです。他のお店と似たようなものを作っても意味がありませんから。新築は、その重要な部分を表現しやすいというメリットがあります」。
移転後は若女将が後を継ぐこともあり、これまでの宴会を中心とした客層に加え、若い世代にも足を運んでもらいたいという要望を受けていた。そこで提案したのが、和洋のデザインを融合させたフレキシブルな間取りだったという。
和の趣を漂わせる切妻屋根の建物には、外でも食事を楽しめるようテラスを設置。木造建築の温かみが漂う店内には、可変式の壁で仕切られた小部屋を配置し、お洒落なバーを彷彿とさせるソファのカウンター席を設けた。必要に応じて壁を動かすことで、小規模から中規模の宴会に対応することができるようになっている。
あまりの人気ぶりにわずか半年で増築
こんなメニューやサービスを提供したら、もっと話題を集められるのではないか─。コンサルティングに近い提案を同時に行うのも、中川さんの大きな特長と言える。若い女性客などをターゲットにランチ営業を行うことを新たに決定。その結果、割烹料理が気軽に食べられるお店として評判を呼び、新しい客層の夜の営業にも好影響をもたらした。
さらには店舗の話題性を広めるため、インパクトのあるメニューづくりを提案。中川さんがネーミングを提案した「秋田町ラーメン」は、より小さな地域にスポットを当てるご当地人気メニューとして和田島焼などとともに定着している。
こうした新店舗での展開は瞬く間に顧客の心を掴み、わずか半年で将来の2期計画として予定していた増築を前倒しに建てるという展開に。当時の活気がなくなったと言われて久しい徳島市の歓楽街だが、顧客を満足させるおもてなしを形にすれば、自然と人は集まってくることを再認識できる案件と言えるだろう。
増築では敷地内のスペースを活用し、小宴会から大宴会までさまざまな形態に対応できる空間設計を実施。制約が多い条件の中で、居心地の良さと使い勝手を見事に両立させた。
「中川さんの直感には驚かされるばかり」と喜ぶ店長。しかし、それはきっと直感ではなく、長年にわたって培われ、磨かれてきた建築家・中川の〝嗅覚〟と呼べるものだろう。
五十鈴さんの夢を叶えた建築家 中川俊博
1956年生まれ、血液型A型、山羊座。九州産業大学芸術学部デザイン科卒。しこくデザインを経て独立。住宅、商業施設、公共施設の設計から東新町アーケードやしんまちボードウォークなど街づくりにかかわる仕事も多い。一級建築士。
設計コンセプト
「和洋を、TPOによって使い分けられるように作っている。秋田町ラーメンなどのご当地メニューなどの提供により、徳島の夜の新たな拠点として使ってもらえるよう計画を行った」
建築データ
■構造 木造2階建て
■工法 在来木造軸組工法
■敷地面積 419.05㎡(約126.98坪)
■延床面積 合計250.51㎡(約75.91坪)
1階219.04㎡(約66.37坪)
2階31.47㎡(約9.53坪)
■スケジュール 設計期間2016年12月~2017年5月
施工期間2017年6月~2017年11月
■設計監理 中川建築デザイン室
■施工 島出建築事務所
阿波割烹 五十鈴
徳島市秋田町1−67
tel. 088-623-3108
営業時間/11:00~14:00(13:30LO)、18:00~24:00(23:30LO)
休み/日曜・祝日(予約の場合は営業)
五十鈴間取り
1 アプローチ
2 ポーチ
3 風鈴室
4 客席
5 カウンター厨房
6 バックヤード
7 客間1
8 客間2
9 厨房
10 客間3
11 客間4
12 客間5
13 休憩所
14 事務室