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» 2019/04/25/
実家で代々受け継がれ、育んできた山の木を使い、育ち盛りの子どもと仲良く暮らせる家を建てたい─。そんな思いのもと、念願の家づくりをスタートしたご夫婦。難しい条件に柔軟に対応してくれる建築家との家づくりを望んだのも、当然の流れだったと言える。
『建てようネット』を通じて何人かの建築家と面談を行った結果、ご夫婦が家づくりのパートナーに選んだのは内野さん。「木の使い方や見せ方など、そのセンスの良さに惚れ込んでしまいました。私たちが要望を伝えると、その場で『じゃあ、こうしましょう』と具体的なプランを提示してくださるんです」とご主人は振り返る。内野さんを選んだもう一つの理由が、施主が所有する木を用いた家づくりへの勝算だった。内野さんは次のように話す。
「実家の木を使う方が、一般的なやり方で材料を購入するよりもお金が掛かります。そこで、長いお付き合いの宮大工の中山さんなら木材の加工から施工までをお任せできるのでコストと完成度を両立できると考えました」。
ちなみに今回の住まいでは、天井の構造部分があらわしになっているが、南側の桁で深い軒を支えるために〝舟肘木〟という日本建築の技術が使われている。社寺建築などで度々協働してきた、建築家と施工会社の阿吽の呼吸がもたらした産物であると言えるだろう。
「あまりに立地条件が良すぎて、建築家としては逆に試されている部分もあった」と笑う内野さん。南側に建物がなく東西に長いという好条件の敷地を活かし、LDKや主寝室、和室、子ども部屋のすべてが南面するように配置した。リビングはすべての部屋とつながっており、引き戸を開ければ、一つの開放空間として使うことができるようになっている。
また、平屋であることを活かした高い天井にも、実家の山の木々を贅沢に使用。日中はトップライトやハイサイドライトからも光が入り、高窓を開ければ風井戸効果もあり、夏場もエアコンなしで過ごせるほど涼しい。リビングの一角には、ご主人の夢だった薪ストーブを設置。屋根他の断熱性能を高めているため、冬場の就寝時にもエアコンは必要ないそうだ。
もう一つ、内野さんがこっそりと仕掛けたのが〝森の風景〟を家の中に漂わせるデザイン。リビングの本棚の収納スペースや、障子の組子、玄関ドアのスリットの幅をランダムにして横桟を極力入れないことで、様々な針葉樹が立ち並ぶ風景をイメージしている。
「このデザインには、そんな意味があったんですね!」と驚くご夫婦に「実はそうなんです」と初めて話されている様子の内野さん。実家の両親が率先して伐り出した木材は研ぎ澄まされたデザインによって新たな命を吹き込まれ、次世代の暮らしに溶け込んでいくのだ。
Kさんの夢を叶えた建築家 内野輝明
1963年生まれ、血液型A型、牡羊座。大阪工業大学建築学科卒。大阪の設計事務所、埴淵建築設計室、髙﨑正治都市建築設計事務所を経て独立。一級建築士。
設計コンセプト
「肘木で持ち出した深い軒の下には全長八間半の長ーい縁側。『うちの山の木』で建てた家です。(施主の)お父さんが管理してきた山から伐り出した材料を使っています。山の針葉樹林の風景を家具や建具に映し込みました」
建築データ
■家族構成 夫婦+子供1人
■構造 木造平屋建て
■工法 在来軸組工法
■敷地面積 662.1㎡(約200.6坪)
■延床面積 合計115.9㎡(約35.06坪)
1階115.9㎡(約35.06坪)
■スケジュール 設計期間2016年5月~2016年10月
施工期間2016年11月~2017年5月
■設計監理 内野設計
■施工 番匠中山
K邸間取り
1 玄関
2 下足室
3 洗面脱衣
4 物干し
5 納戸・クローゼット
6 寝室
7 キッチン
8 リビング・ダイニング
9 和室
10 こども室
11 広縁
12 縁側