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» 2015/04/25/
徳島県は全国でも有数の杉の産地であり、木造建築に杉材を導入したのも非常に早かった。そんな杉と建築に古くから関わり、先駆者として活躍しているお二人に杉の魅力を教えてもらった。一人は数十年もの歳月をかけ、家づくりにふさわしい杉を育て上げる林業家。そしてもう一人はその木材を有効に活用し、心地よい空間を創造する建築家。杉の木の良さを知り、その物語を随所に取り入れることで、家づくりはこれほどまでに豊かになる。木の材は多種多様にあるが、杉に絞って特集を組んだのも、少しでも地産地消に役立ちたいという側面も含んでいる。県産杉を使って家を建てることで、林業家も活性化するはず。
【建築家】野々瀬 徹さん
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【林業家】和田善行さん
●プロフィール
野々瀬 徹
1950年生まれ。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。東京の設計事務所、徳島の建設会社設計部勤務後、野々瀬建築都市設計事務所を設立。四国大学キャンパス、ジャストシステム本社など大規模建築の仕事も多い。一級建築士。
和田善行
1949年生まれ。東京の大学で林学を学んだ後、帰郷。1983年に葉枯らし乾燥を復活させ、翌年に日本初のスギ実大強度試験を実施する。1995年TSウッドハウス協同組合を設立。杉材普及の第一人者として活動を続けている。
杉の温もりと情感が、日本文化の美を醸し出す。
良質な杉材をふんだんに使い、木の温もりに包まれた住まいをつくる。今でこそ豊かな暮らしのイメージが広がるが、30年ほど前までは挑戦的とも言える建築手法だったと和田さんは話す。
「当時、杉は建築現場の足場板として使うものという認識がありました。強度も、ほかの木材と比べて低いと考えられていたので、家の柱や梁などに使われることは一般的でなかったのです」
その常識を覆すきっかけとなったのが、和田さん達が国立林業試験場で行った強度実験。実物大の材を用いて試験を行った結果、当時の主流であったベイマツなどよりも強度に優れていることが実証された。
「杉は軽くて比重が軽いにも関わらず、高い強度を誇っている。これこそが、空間に温かみをもたらす理由です。吸湿性に優れ、シロアリにも強いため、長寿命の家づくりを行うことができます」。
杉材への強いこだわりを共有する林業家が立ち上げた『TSウッドハウス共同組合』では、葉枯らし乾燥と呼ばれる手法を実施。切り旬(※1)を守った杉材を、ゆっくりと時間を掛けて天然乾燥させることで、より優れた強度や香り、耐久性などを実現している。「木の特性を知り、手間を掛ければ、より素晴らしい木材になるのも杉の魅力です」と和田さんは胸を張る。
杉の木の家の良さを体感するため、和田さんが自宅を新築したのが今から30年前のこと。建てようネットの登録建築家でもある野々瀬さんが、梁や壁の杉をあらわしにした真壁軸組の設計を手掛けた。
「合理主義でクールなモダニズム建築に、人間味や日本の美をどのように取り入れるか。和田さんの家を手掛けたのは、ちょうど私がポストモダニズム建築を追い求めていた時期でした。硬くてしっかりしたイメージの桧材に対し、杉の家は情感が優しい。これが日本のヒューマン文化であり、美意識なのだと感じたことを覚えています」
当時、柱や梁、床材などに杉を使っていたのは、日本でも九州や北陸などの限られた地域だけ。ましてや節のある木材を使うことなど、ほとんどなかった。
「節のある木材が普及したのも、その良さを粘り強く発信し続けた和田さんの功績の一つだと思う。今では、大手メーカーがプリントした新建材にも、木の節が入っているんですから」と野々瀬さんは笑う。
徳島で生まれ育ち、多湿な環境にも適した地産地消の木材として注目を集める杉材。「戦後に植えられた60年生の木が増え、良い状態の杉材を手に入れられるようになりました」と和田さん。住まいにやすらぎを求める時代だからこそ、杉材は今後も家づくりの選択肢の一つとして、その存在感を高めていくことだろう。
(※1)デンプン含有量が少なく、虫もつきにくい適正な時期(杉の場合は8月〜3月)に伐採を行うこと。
和田邸データ
■家族構成
施主・妻・子供2人
■構造
木造1階建て
■工法
木造在来工法
■敷地面積
256.95㎡(約77.72坪)
■延床面積
合計 109.87㎡(約33.23坪)
1階 66.55㎡(約20.13坪)
2階 43.32㎡(約13.1坪)
■竣工
1986年4月
■設計監理
野々瀬建築都市設計事務所
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●取材協力
TSウッドハウス
阿南市那賀川町豊香野
tel.0884-21-2022
fax.0884-23-6171
http://www.ts-wood.or.jp/
*毎週日曜13:00~17:00モデルハウス公開中